BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とは?業務代行との違いと、マーケティング領域での活用可能性

BPOとは?ビジネスプロセスアウトソーシングの基本から活用法まで徹底解説

「施策を回したいのに人が足りない」「代理店との調整に追われてコア業務に集中できない」「戦略を立てても実行フェーズで止まってしまう」…こうした悩みを抱える中小・中堅企業の経営者や事業責任者も多いと指摘されています。

人材不足が深刻化し、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応も求められる中で、内製のみでの事業運営に課題を感じる企業も見られます。そうした背景から注目を集めているのがBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)です。

BPOは単なる「業務の外注」や「人手の補填」とは異なり、業務プロセス単位で外部の専門家と連携し、業務の企画・設計から運用までを一括して委託する手法として位置づけられています。

本記事では、BPOの定義や類似概念との違い、任せられる業務範囲、導入時のメリット・注意点を整理したうえで、近年関心が高まっている「マーケティング領域でのBPO活用」についても解説します。
BPOサービス導入を検討する際の判断材料として、ぜひ参考にしてください。

目次

BPOとは何か(定義と基本整理)

BPOとは(一般的な定義)

BPOとは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の略称です。企業が自社内で行っている業務プロセスの一部または全部を、外部の専門企業に委託する手法を指します。

ここで重要なのは、「業務」ではなく「業務プロセス」を委託するという点です。
単純に作業を外注するのではなく、業務の企画・設計から実行、効果検証までを一括して外部パートナーに任せることがBPOサービスの特徴とされています。

矢野経済研究所の定義によると、BPOとは「通常企業内部にて行われるシステム運用管理業務、コールセンター系業務、間接部門系業務(人事・福利厚生・総務・経理)、直接部門系業務(購買・調達・営業)などを、発注企業から委託を受けて代行するサービス」とされています。

出典:矢野経済研究所
「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2024年)」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3674

つまりBPOは、経理処理や給与計算といった定型的なバックオフィス業務だけでなく、営業支援やコールセンター運営など幅広い領域で活用されている外部連携の仕組みといえます。

なぜBPOが注目されているのか(背景)

BPOが改めて注目されている背景には、以下のような企業を取り巻く環境変化があります。

①深刻化する人手不足
日本国内の生産年齢人口(15〜64歳)は減少傾向にあり、人材確保に課題を感じる企業もあります。限られた人的リソースをコア業務に集中させるため、ノンコア業務を外部に委託する動きが広がっています。

②DX推進による業務見直しの加速
DXに取り組む企業が増える中で、既存の業務プロセスを見直し、「自社でやるべき業務」と「外部に任せるべき業務」を切り分ける動きが活発化しています。この過程でBPOの活用が検討されるケースも見られます。

③市場環境の変化スピードへの対応
市場環境や顧客ニーズが急速に変化する中で、すべての業務を内製で対応することが難しくなっています。外部の専門家の知見やリソースを活用することで、変化への対応力を高めようとする企業が増えています。

④BPO市場の拡大
こうした背景を受け、国内BPO市場は拡大傾向にあります。矢野経済研究所の調査によると、2023年度のBPOサービス全体の市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比3.9%増の約4兆8849億円と推計されています。2024年度も引き続き成長が予測されており、特に中堅・中小企業への普及が進んでいるとされています。

出典:矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2024年)」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3674

アウトソーシング・BPRとの違い

BPOを理解するうえで混同しやすいのが、「アウトソーシング」や「BPR」といった類似概念です。それぞれの違いを整理しておきましょう。

アウトソーシングとの違い

アウトソーシングは、特定の業務や作業を外部に委託することを広く指す言葉です。たとえば、「データ入力作業を外部業者に依頼する」「清掃業務を専門業者に委託する」といったケースが該当します。

一方でBPOは、アウトソーシングの一形態ではあるものの、単なる作業の外注ではなく、業務プロセス全体(企画・設計・実行・検証)を一括して委託する点が異なります。

たとえば「給与計算業務」をアウトソーシングする場合、計算作業のみを外部に依頼するケースがあります。これに対してBPOでは、給与計算に関連する業務フロー全体(データ収集、計算処理、振込手続き、問い合わせ対応など)をまとめて委託することが想定されます。

つまり、アウトソーシングは「作業単位」、BPOは「プロセス単位」での外部委託という違いがあるといえます。

BPRとの違い

BPR(Business Process Re-engineering:ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)は、企業の業務プロセスをゼロベースで見直し、抜本的に再構築する経営手法です。日本語では「業務改革」と訳されることが多く、既存の業務の必要性そのものを問い直し、組織や業務フローを根本から作り直すことを目指します。

BPRとBPOの関係を整理すると、以下のように位置づけられます。

  • BPR:業務プロセスを根本から見直す「目的」や「方針」
  • BPO:BPRを実現するための「手段」の一つ

つまり、「BPRの取り組みとして、ノンコア業務をBPOで外部委託する」といった使い方がされることがあります。ただし、BPOを導入する際にBPRが必須というわけではなく、両者は独立した概念として理解しておくことが重要です。

比較表:BPO・アウトソーシング・BPR

スクロールできます
項目BPOアウトソーシングBPR
意味業務プロセスの外部委託業務・作業の外部委託業務プロセスの抜本的再構築
対象範囲プロセス全体(企画〜運用)特定の作業・タスク組織・業務フロー全体
目的業務効率化・専門性の活用コスト削減・人手補填競争力強化・業務改革
性質手段(外部連携の方法)手段(外部委託の方法)目的・方針(改革の考え方)
IT活用必須ではない必須ではないIT活用が伴うことが多い

BPOサービスで任せられる業務範囲

部門別:BPOの対象業務(バックオフィス等)

BPOサービスで委託される業務にはさまざまなものがありますが、主に以下のような領域が対象となります。

①間接部門(バックオフィス)系業務

  • 経理・財務(請求書処理、売掛・買掛管理、決算業務支援)
  • 人事・労務(給与計算、社会保険手続き、採用事務)
  • 総務(文書管理、備品発注、施設管理)

②コールセンター・カスタマーサポート系業務

  • 問い合わせ対応(電話・メール・チャット)
  • 受注処理・予約受付
  • クレーム対応・ヘルプデスク

③IT・システム運用系業務

  • システム運用・監視
  • ヘルプデスク・ユーザーサポート
  • データセンター運用

④直接部門系業務

  • 営業支援(リスト作成、アポイント取得)
  • 購買・調達業務
  • 受発注管理・物流管理

BPOは「ノンコア業務」に限定されるイメージがありますが、近年では営業支援やマーケティングといった「コア業務に近い領域」でも活用が広がっています。

BPOサービスの提供形態(オン/オフ・契約の考え方)

BPOサービスの提供形態は、主に以下のように分類されます。

①オンサイト型
BPO事業者のスタッフが発注企業のオフィスに常駐して業務を行う形態です。社内の情報システムや機密データを扱う業務、密なコミュニケーションが必要な業務に適しています。

②オフサイト型(BPOセンター型)
BPO事業者の施設(BPOセンター)で業務を行う形態です。コールセンター業務や大量のデータ処理業務など、一定のスケールメリットが見込める業務に適しています。

③契約形態の考え方
BPOの契約形態には、「委託業務の範囲」「成果指標(KPI)」「報酬体系」などを明確に定めることが重要とされています。ただし、BPOは基本的に業務遂行を前提とした契約形態が採用されるケースが多いです。

「〇〇の成果を保証する」という形ではなく、「定められた業務プロセスを適切に遂行する」という形で契約されるケースが多い点は理解しておく必要があります。

マーケティングBPOという考え方(再定義)

近年、BPOの活用領域は従来のバックオフィス業務だけでなく、マーケティング領域でBPO的手法が活用されるケースも見られます。

「マーケティングBPO」とは、企業が行うマーケティング活動の一部または全部を、外部の専門企業にプロセス単位で委託する形態を指します。

単発の広告制作や一時的な施策運用を外注する「スポット発注」とは異なり、マーケティングプロセス全体(戦略立案・施策設計・実行・効果検証)を継続的に任せる点が特徴です。

マーケティングBPOが注目される背景には、以下のような課題があります。

  • デジタルマーケティングの複雑化により、専門人材の確保が難しい
  • 施策の企画から実行まで、社内リソースだけでは手が回らない
  • 代理店への発注・管理業務に時間を取られ、戦略立案に集中できない

こうした課題を抱える企業にとって、マーケティングBPOは「人手の補填」ではなく、「マーケティングプロセス全体を外部パートナーと共に設計・運用する」という選択肢として検討されています。

マーケBPOで扱われる業務プロセス例

マーケティングBPOで委託されることが多い業務プロセスには、以下のようなものがあります。

①戦略・企画フェーズ

  • 市場調査・競合分析
  • ターゲット設定・ペルソナ策定
  • マーケティング戦略の立案支援

②施策設計・コンテンツ制作フェーズ

  • Webサイト・ランディングページ制作
  • コンテンツマーケティング(記事・動画・ホワイトペーパー)
  • SNS運用設計

③施策実行・運用フェーズ

  • デジタル広告運用(リスティング・ディスプレイ・SNS広告)
  • MA(マーケティングオートメーション)ツール運用
  • メールマーケティング運用
  • インサイドセールス(リード対応・アポイント取得)

④効果検証・改善フェーズ

  • データ分析・レポーティング
  • KPI管理・改善提案
  • CRM連携・顧客データ管理

マーケティングBPOを検討する際は、「どのプロセスを任せるか」「どこまでを自社で担うか」を明確にすることが重要です。すべてを丸投げするのではなく、自社の戦略意思決定は内製で行いつつ、実行フェーズをBPOで補完するといった使い分けが現実的とされています。

BPO導入のメリット・注意点

BPOの主なメリット

BPOを導入することで期待されるメリットには、以下のようなものがあります。

①コア業務への集中
ノンコア業務や定型業務を外部に委託することで、社内の人的リソースを本来注力すべきコア業務(事業戦略・商品開発・顧客対応など)に集中させることができます。

②専門性の活用
BPO事業者は特定領域の専門知識や経験を持っているケースが多く、自社で一から人材を育成するよりも、早期に専門的な業務品質を確保できる可能性があります。

③コストの最適化
自社で人材を採用・育成する場合と比較して、変動費化やスケールメリットの活用により、コスト効率が改善される可能性があります。ただし、「必ずコスト削減になる」とは限らないため、導入前の試算が重要です。

④業務の可視化・標準化
BPO導入にあたって業務プロセスを整理することで、これまで属人化していた業務が可視化・標準化されるケースがあります。結果として、業務品質の安定や引き継ぎの容易化につながることもあります。

⑤リソースの柔軟な調整
繁閑の差がある業務において、必要な時期に必要なリソースを確保できる点もメリットとされています。自社で人員を抱えるよりも、需要変動に応じた柔軟な体制構築がしやすくなります。

導入前に知っておくべき注意点

一方で、BPO導入には以下のような注意点もあります。事前に把握しておくことで、導入後のトラブルを防ぎやすくなります。

①ノウハウの社内蓄積が難しくなる可能性
業務をBPO事業者に任せることで、その業務に関する知見やノウハウが社内に蓄積されにくくなるリスクがあります。将来的に内製化を検討する場合や、BPO事業者との契約終了時に課題となることがあります。

②コミュニケーションコストの発生
外部パートナーとの連携には、一定のコミュニケーションコストが発生します。要件の伝達、進捗確認、品質管理など、社内完結の場合とは異なる調整業務が生じる点は考慮が必要です。

③情報セキュリティ上のリスク
顧客情報や社内機密情報を外部に共有するケースでは、情報漏洩リスクへの対策が必要です。BPO事業者のセキュリティ体制(プライバシーマーク取得、ISMS認証など)を事前に確認することが重要です。

④期待成果の認識ずれ
前述のとおり、BPOでは業務遂行を前提とした契約形態が採用されるケースが多いとされています。「BPOを導入すれば売上が上がる」「必ずコスト削減になる」といった過度な期待は禁物です。導入目的やKPIを明確にし、BPO事業者との間で期待値を擦り合わせることが重要です。

⑤社内の反発・組織変更への対応
BPO導入により、既存社員の業務内容や役割が変わるケースがあります。導入の背景や目的を社内に丁寧に説明し、従業員の理解を得ることが円滑な導入につながります。

失敗しにくいBPO導入の考え方

導入検討時の整理ステップ

BPO導入を成功させるためには、事前の整理と準備が重要です。以下のステップを参考に検討を進めることをおすすめします。

ステップ1:現状の業務棚卸し
まずは自社の業務を洗い出し、「コア業務」と「ノンコア業務」を切り分けます。どの業務にどれだけの工数がかかっているか、誰がどのように担当しているかを可視化することが出発点となります。

ステップ2:課題と目的の明確化
BPOを検討する理由や解決したい課題を明確にします。「人手不足の解消」「コスト削減」「専門性の強化」「業務品質の向上」など、目的によって適切なBPOの活用方法は異なります。

ステップ3:委託範囲の検討
どの業務プロセスをBPOに委託するかを検討します。すべてを委託するのか、一部のみを委託するのか、段階的に委託範囲を広げるのかなど、自社の状況に応じた判断が必要です。

ステップ4:KPI・評価基準の設定
BPO導入後の効果を測定するためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。業務遂行の品質、処理件数、コスト、顧客満足度など、定量的に評価できる指標を定めておくことが重要です。

ステップ5:BPO事業者の選定・契約
複数のBPO事業者を比較検討し、自社の要件に合ったパートナーを選定します。契約内容(業務範囲、責任分界点、報酬体系、契約期間など)を明確にしたうえで契約を締結します。

ベンダー選定で見るべき観点

BPO事業者を選定する際には、以下の観点を確認することが推奨されます。

①実績・専門性
委託したい業務領域での実績や専門性があるかを確認します。同業種・同規模の企業への導入実績があれば、自社の業務にも対応しやすい可能性があります。

②セキュリティ体制
情報セキュリティに関する認証取得状況(プライバシーマーク、ISMS認証など)や、具体的なセキュリティ対策を確認します。必要に応じて、業務遂行場所の視察も検討します。

③コミュニケーション体制
担当者との連絡方法、報告頻度、緊急時の対応体制などを確認します。円滑なコミュニケーションが取れるかどうかは、BPO成功の重要な要素です。

④柔軟性・拡張性
業務量の増減への対応力、委託範囲の拡大への対応力などを確認します。事業の成長や変化に合わせて、柔軟に対応できるパートナーが望ましいとされています。

⑤費用体系の透明性
費用の内訳や算出根拠が明確かどうかを確認します。追加費用が発生する条件なども事前に把握しておくことで、導入後のトラブルを防ぎやすくなります。

まとめ・次のアクション

まとめ・結論

本記事では、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)について、定義・類似概念との違い・対象業務・メリット・注意点・導入の考え方を解説しました。

改めて重要なポイントを整理すると、以下のようになります。

  • BPOは単なる業務代行ではなく、「業務プロセスの企画・設計から運用までを一括して外部に委託する」手法
  • アウトソーシングが「作業単位」の外注であるのに対し、BPOは「プロセス単位」の外部連携
  • BPRが「業務改革の目的・方針」であるのに対し、BPOはその「手段の一つ」として位置づけられる
  • BPO導入の成否は、事前の業務整理・目的の明確化・KPI設定・パートナー選定に大きく依存
  • マーケティング領域でもBPO活用が広がっており、「戦略と実行を分断しない」視点で外部連携を設計することが重要

BPOは「人手不足の解消策」としてだけでなく、自社のリソースをコア業務に集中させ、専門性を活用しながら業務品質を高める手段として活用されています。ただし、導入すれば必ず成果が出るというものではなく、目的に応じた適切な設計と運用が求められます。

次の行動示唆

BPO導入を検討されている方は、まず以下のアクションから始めてみることをおすすめします。

  1. 自社の業務を棚卸しし、「コア業務」と「ノンコア業務」を整理する
  2. BPOで解決したい課題・達成したい目的を言語化する
  3. 複数のBPO事業者から情報収集し、自社の要件に合うかを比較検討する

特に「マーケティング領域でのリソース不足」「施策の実行力強化」に課題を感じている場合は、マーケティングBPOという選択肢も視野に入れて検討してみてください。

SORAMICHIの「マーケティング丸ごとBPO」サービス

株式会社SORAMICHIの「マーケティング丸ごとBPO」は広告運用を超えて、BI、CRM、Web制作、AI活用、データ活用、開発まで一気通貫で丸ごと担う新しい時代のマーケティング支援サービスです。

マーケティングのあらゆる業務を、1つの統合チームでまるごと対応します。エンタープライズ企業を中心に、幅広い業界でご支援しています。貴社のビジネス成長に本気でコミットするパートナーをお探しなら、ぜひSORAMICHIにご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次