プロから学ぶ!UXデザイン基礎「UXとは?」「UXはなぜ重要?」【YouTube動画まとめ記事】

この記事では、ソラミチの顧問の丸山潤さんによるUXデザインの基礎についての解説動画の内容をまとめています。
今回のテーマは「UXとは?」「UXはなぜ重要?」です。
丸山さんのお話を全部聞きたいという方はYouTube動画のご視聴をおすすめします。

目次

事業開発で重要なこと

「UXデザインとは何か」について解説する前に、まずは「事業開発で重要なこと」について触れていきます。

 『アマゾンが描く2022年の世界』(田中道昭著/PHP研究所 PHPビジネス新書)によると、アマゾンはミッション・ビジョンに「顧客第一主義」を掲げています。さらに、「ユーザー・エクスペリエンスこそ最優先される」「ユーザー・エクスペリエンスが低い商品は絶対出さない」と言い切っています。

アマゾンの戦略にはピラミッド状に上から、「ミッション・ビジョン」「戦略」「マーケティング戦略」「マーケティング戦術」とあります。トップに位置するミッション・ビジョンでは「地球上で最も顧客第一主義の会社」とあり、戦略として最も大切なものにユーザー・エクスペリエンス、つまりUXデザインがあるのです。

そもそも、デザインとは?

「デザイン」は日本語で「設計」と訳されます。その設計の詳細とは、「具体的な問題を解き明かすために思考概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現すること」と解することができるでしょう。一般的に、デザインというと「見た目がいいものを作る」というイメージがあるかもしれませんが、実はそうではないのです。 

WEBデザインとは?

パソコンが出始めてから、「WEBデザイン」という言葉も耳なじみがあるかと思います。Webサイト上に様々な情報や画像が載っているものであればそれは、WEBデザインがされていると言えるでしょう。

WEBデザインはどのような要素で成り立っているのか、細かく分解すると、「UXデザイン」「UIデザイン」「ビジュアルデザイン」の3つのデザインに分けられます。

ビジュアルデザインとは?

ビジュアルデザインはわかりやすく言うと、「かっこいい」「かわいい」など、ユーザーが視覚で感じるデザインです。一般的に、「デザインとは?」と聞かれたときに皆さんがイメージするデザイン像に近いのではないでしょうか。

UIデザインとは?

UIデザインは、ユーザーがPCとやり取りをする際の入力や表示方法などの仕組みのことです。「ワイヤーフレームを作る」という言い方もします。例えば「購入する」「問い合わせる」といったボタンの配置のように、どこに何の情報をどのように載せるか、インターフェースを設計することがUIデザインです。

UXデザインとは?

UXデザインは目に見えるデザインではありません。目に見えないため、Webデザインをする際に一番抜けやすい要素と言われています。なぜ目に見えないかと言うと、UXデザインは「ユーザー体験」と言い換えることができるからです。ユーザー体験とは、ユーザーが製品やサービスを利用することによって受ける印象のことを指します。

UXデザインについてイメージしやすいように、飲食店とECサイトを例にして説明します。ユーザー体験は人によって感じ方が違うので、この例が絶対ということはありません。参考として読んでみてください。

UXデザイン例① 飲食店

例えばレストランや居酒屋のような飲食店に入ったとします。ホール担当の店員を通じて注文し、最後に会計をするというのがスタンダードな流れでしょう。顧客は会計時まで、合計金額がどのくらいになっているのか分かりません。店側からすると、顧客は値段を正確に把握していないので、どんどんお酒を頼んでくれたら儲かりやすいという設計があります。

別のパターンとして、「入店時に会計を済ませる」というものがあります。ラーメン店などでよく見られるものです。この場合、顧客は最初の段階で支払う金額を決められるので、節約したいときなど、心理的安全性が高いといえるでしょう。店側としても、会計時にわざわざ対応しなくてすむので、労務コストが下がるというメリットがあります。近年ではスマートフォンの普及に伴い、バーコードやQRコードを読み込むだけで注文や決済ができるというものも増えてきています。

どちらの場合も「何を目的に来ているか」という、いわゆる「ペルソナ」と呼ばれる、店それぞれの考え方でユーザー体験は変わります。売上を上げることが一番大事だと考える場合は、金額が見えづらい状態で多く注文してもらい、最後に会計する方が良いかもしれません。なるべく多くの人に食べてもらって回転率を上げたい場合は、最初に注文と支払いを済ませる方が、店のサービス提供と顧客の滞在時間の効率を上げられると考えられるでしょう。

UXデザイン例② ECサイト

ECサイトの例として、冒頭でも触れたアマゾンのサイトを見てみましょう。

アマゾンでは、購入するときに押す「カートに入れる」ボタンの下に、「今すぐ買う」ボタンがあります。時間がない人や、とにかく早くこの商品を届けてほしい人にとって、大変便利な機能です。私自身も「あ、これ買うの忘れてた」という時に、この「今すぐ買う」ボタンがあることで、「明日届く」という安心感を得られるので助かっています。本来は購入ボタンが1つあれば良いところ、ユーザーが急いでいる状況を想定してボタンの追加デザインが施されている。これも大きなユーザー体験と言えます。

良いUXデザインとは?

良いUXデザインとはどんなデザインでしょうか。

1つは「使いやすさ」が挙げられます。そしてもう1つ、「動機づけ」です。この両方を兼ね備えていると、サービスとして使いやすい、良いプロダクトと言われます。ユーザー体験を高めると、サービス利用の動機づけや使いやすさが向上します。

なぜUXデザインが重要になったのか

UXデザインは元々、心理学から発展してきました。錯覚や不注意など、人間が持っている行動特性(人的要因)を「ヒューマンファクター」と言います。米国のGoogleに勤めている人だと、心理学を専攻した人がヒューマンファクターの資格を持つようになりました。そのような人たちが、20年ほど前からUXデザインの職種に入るようになっていったという歴史があります。

昔はラジオが生まれ、テレビが生まれ、携帯電話が生まれ…と、ないものから何か新しい商品の発明がされてきました。体験云々の前に、そもそもそのもの自体が無かった時代なので、その良し悪しにかかわらず作れば大量生産され、売れた時代でした。

それが2000年に突入すると、携帯電話にしてもラジオにしても、体験が変わってきます。今であればラジオをスマートフォンで聴けるので、わざわざラジオを買って聴く人はいないですよね。携帯電話も昔は電話の機能だけでしたが、今は音楽が聴けるようになったり、使われ方が変わっていきました。何が言いたいかというと、UXデザインが重要になったのには、企業向けのサービスの競争優位が「機能性」から「体験向上」へ変化したというのが、1番大きな理由なのではないでしょうか。体験が良かったものが売れる時代になったのです。

体験の変化

良い体験の例として、コンテンツの楽しみ方を挙げたいと思います。

今日では、SpotifyやNetflixなどのサービスを通じて、音楽や映画を楽しむのは珍しいことではなくなりました。昔はレンタルビデオ店があちこちにありましたが、今は見かけることが少なくなってきています。

レンタルビデオの場合、「借りに行く」という手間が発生します。かつ、1週間などの「期限」があります。さらに、もし予定が入るなどして返却日を過ぎてしまうと、「追加料金」を支払わなければいけません。この体験にユーザーはものすごく不満があったはずです。

一方で、NetflixやSpotifyは、月額固定料金で見放題であり、わざわざ貸し借りの移動もしなくていい。人間はものすごく怠惰な動物です。楽になるものにお金を払います。まさにこの事例は、ユーザー体験が変わったことで売れた象徴とも言える事例です。

「全てのハードウェアはソフトウェアになる」

良い体験ができるものが売れて、これまでのあり方が変わってきました。ただ、気づけばグローバルのサービスが溢れ、気づけば日本のサービスでなくグローバルのサービスを使うことが増えました。今後もUXデザインは重要視されていくでしょう。

MicrosoftのCEOであるサティア・ナデラは、「全てのハードウェアはソフトウェアになる」ということを過去のスピーチで発言しています。

わかりやすい例で言うと「テスラ」です。テスラのすごさは、もちろんハードウェアやデザインにもありますが、一番は自社で開発している「ソフトウェア」ではないでしょうか。日本の車のカーナビは、ディーラーに行かなければアップデートされません。テスラは月額費用はかかりますが、iPhoneと同じように、アップデートのたびにソフトウェアが更新されていきます。例えば自動運転のセキュリティなど、自動的に機能が進化していく仕組みに価値があるのです。サティア・ナデラは「ソフトウェアを制していなければ、今後のハードウェアも厳しくなる」と言っています。これはソフトウェア、つまりUXデザインがものすごく重要になっていくということを意味します。AIがブームになっていますが、UXデザインは変わらずこれからも必ず大事なポイントであり続けるでしょう。

グローバルのサービスが増えたのはなぜ?

強いプロダクトを持つグローバル企業は、ユーザーのインサイト、つまり「何のためにこのサービスを作ってるのか」というところを探した上でプロダクトを作成しています。日本や東南アジアで自国発のサービスが増えなかったのは、アメリカが作ったサービスのコピーが多かったからではないかと推測しています。イノベーションはコピーからでは起こせません。本質的な課題を探索して、本当に何が必要であるのかを見つけることが大切です。

また、『UX戦略』(安藤幸央、長尾 高弘著/オライリージャパン)にも書かれていますが、もし競合がいた場合に、競合との差別化が何であるかをはっきりさせてこなかったことが一番の問題なのではないかと考えています。Airbnbも然り、リサーチする中でユーザーにとって何が必要なのかということを深堀していくことが重要です。

では次はですね、UXリサーチとUXデザインというお話しをしたいなと思います。ちょっとここは少し混乱してしまうかもしれないんですけれども、重要なポイントなのでお話しさせください。

(UXデザイン基礎講座PART2に続きます!)

まとめ

UXデザインは、単なる視覚的な美しさではなく、ユーザーが快適な体験ができる設計そのものです。特に近年では、製品やサービスの競争力の質が「機能性」から「体験向上」にシフトしており、良いユーザー体験が成功の鍵を握っています。

ビジネスの成長には、優れたUXデザインが不可欠です。今後もAIなどのデジタル技術の進化とともにUXデザインの重要性も増していくでしょう。

この記事を書いた人

丸山 潤

エグゼクティブ・アドバイザー

コンサルティング会社でデザイン・フロントエンド技術者として、UI開発に深く携わる。その後リクルート入社、ニジボックスに出向しPDMなどを経験。
株式会社リクルートホールディングスのインキュベーション部門『Media Technology Lab』に参画。

ニジボックスにてデザインファーム事業を立ち上げ、執行役員に就任。新しいUXソリューションの開発を推進。現在は、UXコンサルティング、およびUX組織育成の担当して当社のアドバイザーに就任。

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