dbt on Snowflakeによるデータ基盤モダナイゼーション検証【大手ヘルスケア/ライフサイエンス企業企業様】

本事例では、レガシーなデータ基盤を抱える企業が、どのようにしてモダンなデータパイプラインへ移行できるのかを検証しました。
大手ヘルスケア/ライフサイエンス企業様において、Javaベースで構築されたバッチ処理基盤から、Snowflake × dbt を活用したデータパイプラインへの移行検証(PoC)を実施しました。
本PoCは単なる技術検証ではなく、実際の本番業務で利用されているデータマート作成プロセスを対象とし、移行の現実性と導入効果を総合的に確認することを目的としています。
背景|レガシー基盤が抱えていた課題
データ活用の重要性が高まるにつれ、既存のデータ基盤が組織や運用の足かせになるケースも増えています。
当該企業様でも、長年運用してきた基盤に起因する複数の課題が明確になっていました。
Javaバッチによる属人化・ブラックボックス化
まず大きな課題となっていたのが、データ加工ロジックの属人化です。
従来のデータ加工処理はJavaコードで実装されており、内容を理解・修正できるエンジニアが限られていました。その結果、SQLを扱えるデータアナリストであってもロジックを把握できず、処理内容がブラックボックス化する「秘伝のタレ」状態が進行していました。
設計書作成・更新にかかる高い運用コスト
次に課題となっていたのが、ドキュメント運用の負荷です。
処理内容を可視化するため、Excelによる設計書管理が行われていましたが、作成・更新は完全に手作業でした。データ構造やロジック変更のたびに更新が必要となるため、運用コストが膨らみ、結果としてドキュメントが最新状態を維持できないリスクを抱えていました。
ETL型構成によるスケーラビリティとコストの制約
インフラ構成の面でも課題がありました。
データ変換処理をアプリケーションサーバー側で行うETL型構成を採用していたため、Snowflakeが本来持つ計算リソースやスケーラビリティを十分に活かせていませんでした。特に大規模データ処理時には、コストやスケール面で限界が見え始めていました。
開発環境の参入障壁とデータ活用の停滞
最後に、体制面での課題も顕在化していました。
SQLスキルを持つデータアナリストは存在していたものの、Java開発やローカル環境構築が前提となっていたため、基盤開発への参加ハードルが高い状況でした。その結果、データ活用を組織全体に広げる取り組みが停滞していました。
目的|SQLベースでオープンなデータパイプラインへ

これらの課題を踏まえ、本PoCでは目指すべき姿を明確に定義しました。
「dbt Projects on Snowflake」を活用し、SQLを中心としたオープンなデータパイプラインへ移行することで、誰でも理解・レビューできる構造を実現できるか、またSnowflakeネイティブで開発・運用が完結する体制を構築できるかを検証しました。
併せて、テストやドキュメント自動化によるガバナンス強化も重要な検証ポイントとしています。
検証内容|3つの観点から移行実現性を検証
本PoCでは、移行が「できるかどうか」だけでなく、「移行した結果どう良くなるか」を重視しました。

既存ロジックの正確な再現性
まず、既存資産を安全に引き継げるかを確認しました。
Javaバッチに実装されている複雑な業務ロジックを、dbtのSQLモデルとして機能差異なく移行できるかを検証し、既存処理と同一の結果を出力できることを前提に評価を行いました。
Snowflake完結型の開発・運用の実現性
次に、インフラ構成と開発体制の観点から検証を行いました。
ETLサーバーを利用せず、Snowflakeのネイティブ機能のみでチーム開発・運用が成立するかを確認しました。特に、ローカル環境構築を必要としない開発フローが実現できるかどうかを重視しています。
運用品質・ドキュメントの自動化
最後に、運用面での改善効果を検証しました。
従来は手作業に依存していたデータ品質チェックや仕様書・設計書管理について、dbtの標準機能を活用することで自動化・高度化が可能かを確認しました。
検証結果|懸念を払拭し、効果を実証

検証の結果、技術面・運用面ともに大きな効果が確認されました。
JavaバッチのSQL化とdbtによる構造化(出力100%一致)
既存のJavaロジックをSQLへ完全に移行し、dbtのBest Practiceに沿ってレイヤー分割を行いました。
ループや分岐処理はJinjaやMacroで実装し、既存バッチと100%一致する出力結果を確認しています。
これにより、ロジックの可視性が向上し、レビューや引き継ぎが容易な状態を実現しました。
インフラ管理不要のチーム開発体制を確立
次に、開発体制の変化です。
ブラウザベースのdbt Shared Workspaceを活用することで、ローカル環境構築を行うことなく、複数名が並行して開発できる体制を構築しました。ETLサーバーの運用・管理コスト削減と、開発リードタイム短縮の両立を実証しています。
テスト自動化とDocsによるガバナンス強化
運用面でも大きな改善が見られました。
uniqueやnot_nullといった基本的な品質テストに加え、業務ルールに基づくカスタムテストを自動実行するパイプラインを構築しました。さらにdbt Docsを活用し、コードと常に同期した仕様書やデータリネージを自動生成することで、ドキュメント更新工数の削減とガバナンス強化を同時に実現しています。
本検証から見えた、提供可能なソリューションと適用企業像

今回のPoCを通じて明らかになったのは、Snowflake × dbt によるデータ基盤モダナイゼーションが、単なるツール導入ではなく、組織や運用のあり方そのものを変える打ち手になり得るという点です。
特に、次のような課題意識を持つ企業に対して、本事例で検証したアプローチは高い親和性を持つことが確認されました。
レガシーなETL/バッチ処理に限界を感じている企業
長年にわたりJavaやETLツールで構築されたデータ基盤は、安定稼働という点では価値を発揮してきました。一方で、処理ロジックがコードの奥深くに埋もれ、「なぜこのデータがこうなるのか」を説明できる人が限られているという状況に陥りがちです。
本PoCでは、そうしたJavaバッチに実装されたロジックをSQLとして再構築し、dbtのレイヤー設計に沿って整理しました。その結果、既存出力と100%一致させたまま、ロジックの可読性・レビュー性を大幅に高めることができました。
これにより、属人化を解消しつつ、将来の改修や内製化を見据えた「変えられる基盤」への転換が可能になります。
Snowflakeを導入したものの、十分に活用できていない企業
Snowflakeを導入していても、変換処理の多くが依然としてETLサーバー側に残っているケースは少なくありません。その場合、DWH本来のスケーラビリティやパフォーマンスを十分に活かせず、インフラコストや運用負荷が期待ほど下がらないという課題が残ります。
本事例では、Snowflake上で変換処理まで完結させるELTアーキテクチャを採用し、dbtを軸に開発・運用フローを再設計しました。ETLサーバーを前提としない構成でも、チーム開発や品質担保が成立することを確認しています。
その結果、Snowflakeの特性を最大限活かした、シンプルでスケーラブルなデータ基盤への移行が現実的な選択肢となりました。
データ基盤の属人化を解消し、ガバナンスを強化したい企業
データ基盤が成長するにつれて、「誰がどのルールでデータを作っているのか分からない」「設計書が実態と合っていない」といった問題は避けて通れません。一方で、ガバナンス強化のために手作業のチェックやドキュメント更新を増やすと、現場の負担が大きくなってしまいます。
今回のPoCでは、dbtのテスト機能とDocs機能を活用し、品質チェックとドキュメント生成を自動化しました。これにより、コードと仕様の乖離を防ぎつつ、常に最新の状態を参照できる環境を構築しています。
運用負荷を増やすことなく、「自然と守られるガバナンス」を実現できる点は、特に多くの企業にとって大きな価値となります。
データアナリストを巻き込み、データ活用を加速させたい企業
データ活用を進めるうえで、分析担当者が基盤開発から切り離されてしまうと、どうしてもスピードや柔軟性に限界が生じます。しかし、Java開発や複雑なローカル環境構築が前提となっている場合、アナリストが参加しづらいのが実情です。
本事例では、ブラウザベースで完結するSnowflake × dbtの開発環境を前提に設計を行いました。その結果、SQLスキルを持つアナリストが、安全かつスムーズに開発プロセスへ関与できることを確認しています。
これは、「一部のエンジニアが作る基盤」から「チーム全体で育てる基盤」への転換を後押しするものです。
リスクを抑えながら、段階的にモダナイゼーションを進めたい企業
データ基盤の刷新は影響範囲が広く、「一気に切り替えるのは怖い」と感じる企業も少なくありません。本PoCでは、実運用で使われているデータマートを対象に、既存出力との突合を前提とした検証を行いました。
このアプローチにより、現行業務を止めることなく、効果とリスクを見極めながら段階的に移行を進められることが確認されています。技術検証から本番展開までを一貫して支援できる点も、本事例の重要な示唆です。
本事例が示す提供価値
本事例を通じて提供できる価値は、「SQLによる透明性」「Snowflakeネイティブなシンプル構成」「自動化された品質・ドキュメント」を軸に、データ基盤を “一度作って終わりのもの” から “継続的に改善・拡張できるもの” へ進化させること にあります。
PoCによる検証から始め、現実的かつ持続可能な形でモダナイゼーションを進めたい企業にとって、本事例は具体的な道筋を示すものと言えるでしょう。

